「林能楽部」能・菊慈童”KYOTO de petit能2021/9/10″文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
写真2021年12月31日
能「菊慈童」
作者不詳 / 四番目物 / 季節:秋 /典拠:『太平記』巻十三
(地謡・囃子方→わら屋→ワキの順番で登場します。)
勅使(ワキ)が登場
山の奥まで道が出来ているのはこの御世が良いおかげだと、ご政道を褒める言葉から始まります。
そして自分は、酈縣山の麓から湧き出た霊水を探るべく魏の文帝より派遣され、山道をくると庵があった、という事を淡々と語ります。
勅使は、不思議な庵を発見し、この辺りの事をうかがってみようと言います。
【シテ登場】
「邯鄲の枕は百年の栄華を見せるが、慈童の枕は昔の嫌な思い出を思いださせ、よく眠れない。」良い夢もなく、嵐をしのぐ松の根元で仮住まい、袖を濡らす毎日だと嘆きます。
【ワキとシテとのやりとり】
そこにやってきた勅使。勅使は人里はなれた場所で人間の姿をした化生の者、と断じます。
そこで慈童は、自分は穆王に仕えていた人間であると言い、信じない勅使に、穆王からもらった「二句の偈」が書かれた枕を見せます。勅使は慈童の言うことを信じますが、同時に、慈童が既に700年もの間生きていた事に驚きます。慈童自身もその時初めて自分が700歳となっていた事を知るのでした。
慈童は言います。
穆王から賜った枕に書かれた「二句の偈」を忘れぬよう菊の葉に書き写していたと。そしてその偈の力によって、菊の葉から滴り落ちる露に不老不死の力が宿り、川の水が「薬の水(霊水)」となった事がわかります。
慈童は700年を生きてこられた事を喜び、勅使と共に寿ぎ舞います。
汲む人も汲混ざるも延ぶるや千歳なるらん 面白の遊舞やな
薬の酒では酔いに侵される事もなく、慈童は「萬歳の我が君」と帝の世を寿ぎます。
そして、我が君(勅使が使える文帝)に菊水を授ける為、汲みなさい、飲みなさいと勅使に伝えると、自分は山路の仙家へと消えるのでした。
“KYOTO de petit能 2021/文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業”
*Youtubeに、公演全映像がアップされています。是非どうぞ。
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そもそも菊慈童とは…
周の第五代目・穆王に仕え寵愛されていた若者(童子)。ある日慈童は穆王の枕を跨いでしまい、酈縣山へ流罪となってしまいます。そして別れの際、慈童は己がまたいだ枕を穆王から賜ります。
穆王は、釈迦から授かった「四海領掌の八偈(帝王の偈、法華経の経典のこと)」のうちの最後の箇所に当たる「普門品」と呼ばれる「二句の偈」を枕に書き添え、密かに児童に授けられました。
当時、偈とは王のみが知る秘伝中の秘伝。慈童はその偈を菊の葉に書き写します。するとその葉から滴り落ちる露が不老不死の水となり、その露が落ちた川の水が「菊水」の起こりとなったのです。
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