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Ikkakusennin 一角仙人 林能楽部03 Ikkakusennin 一角仙人 林能楽部03

四番目物

季節
作者 金春禅鳳

一角仙人の説話は仏典や今昔物語集、太平記などに見られ、物語の舞台波羅奈国もインドである。一角仙人の額にある一本の角は、般若の頭に生える二本の角が普通に見えてしまう程の異形であり、ツレの美女、旋陀夫人、子方の龍神の出現など豪華絢爛で初心者や子どもでも見やすい能演目である。

役 cast
シテ 一角仙人
ツレ 旋陀夫人
子方 龍神
ワキ 官人
ワキツレ 輿

ストーリー ストーリー

一角仙人:鼡地三ツ巴鶴菱厚板 黒地縷水衣

天竺(インド)波羅奈国に1人の仙人が住んでいます。
この仙人は鹿から生まれ、額に一本角が生えているので、名を一角仙人と呼ばれていました。

仙人は、仙境に住み、松の葉を食べ苔を着て桂の露を舐めて不老不死の身を保ち、神通力を持つと言われています。
この一角仙人、ある日雨で滑りやすくなった山で転んだ事に怒り、雨を降らせる龍神を岩に閉じ込めてしまいます。龍神を封じ込められた波羅奈国には雨が降らなくなりました。

困った国王は計略をめぐらせ、国中で最も美しい旋陀夫人を仙人に近づけ、夫人の色気で仙人の神通力を奪うよう命を出します。

旋陀夫人:白浅黄段摺箔、浅黄地扇面紋大口、赤地立涌文様舞衣

いつしか仙境へと足を踏み入れた夫人一行はとうとう庵にたどり着き、道に迷ったふりをして案内を乞います。
そして、その美と情で、仙人に酌を受けさせるのでした。

一角仙人:紫地斜子織厚板、黒地縷水衣 旋陀夫人:白浅黄段摺箔、白地立波ニ紅葉文様紋大口、白地舞衣

初めての酒、初めての舞に容易く堕ちる仙人。美しい舞につられ夫人の後ろについて舞う姿はなんとも言えない情けなさ。

遂には神通力を失い酔い潰れます。それを喜びさっさと帰る旋陀夫人一行。

そして俄に鳴動する岩。中から封じ込めた龍神たちが飛び出します。

龍神(右):紅萌黄段雲毘沙門文様厚板、紺地井筒唐花袷法被、赤地立鼓亀甲巴半切
龍神(左):黒紅段雲盤牡丹文様厚板、紺地立鼓亀甲巴袷法被、赤地山型二風丸半切

「いかにやいかに 一角仙人人間に交わり心を迷わし 無明の酒に酔い臥して
通力を失う 天罰の報いの程を思い知れ」

最早神通力はなく、共に人生を過ごそうと思った夫人も去った後。全てを失った哀れな一角仙人に子方が演じる龍神の無邪気に言い放つこの一文が、神の残酷さを一層際立たせます。

剣を抜いて応戦するも、弱り倒れ伏してしまった仙人を置き、龍神たちは大喜び、雲を突き破り大雨を降らせ、洪水までだして龍宮に帰って行ったのでした。

「一角仙人」では龍神が閉じ込められた岩屋、一角仙人の住処の小屋が舞台上に設置されます。
能ではリハーサルの事を「申合せ」と言い、基本的に一回のみ行われますが、「作り物」と呼ばれるこれらの大道具が必要な演目では、申合せ前後で念入りに打合せが行われます。

また子方が出演する演目の申合せでは、装束慣れをさせる為に子方のみ装束を着せる事も。

親だけでなく、出演する大人の能楽師みんなで子どものサポートをして舞台に向かいます。

Photo by kuma.one , 渞 忠之

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